犬の弁膜症とは?【原因・症状・ステージについて解説】
犬の弁膜症とは?
犬の弁膜症とは心臓の僧帽弁に異常が生じる病気のことです。
弁膜症が発症すると心臓が収縮した際に、この僧帽弁がうまく閉じなくなってしまい、血液が左心室から左心房へと逆流してしまう現象が起こるのです。
その結果心臓の機能に影響が及ぶだけでなく、全身に血液がスムーズに運ばれなくなることでさまざまな症状が見られるようになります。
本来心臓は拡張した際に心房から心室へと血液が送られ、収縮の際に心室から血液が全身へと送られます。
血液は心房から心室へと一方通行のような形で流れているわけで、僧帽弁は左心房から左心室へと血液が流れる際には開かれますが、収縮するときには閉じることでこの一方通行の流れを保つ働きを持っているのです。
犬の弁膜症の原因とは?
どうして僧帽弁が閉鎖されなくなってしまうのでしょうか?
実ははっきりとした原因はまだよくわかっていません。
うまく閉鎖されなくなる原因そのものに関してはいくつかのケースが見られます。
原因.1
例えば僧帽弁に粘液腫様変性という状態が発症して僧帽弁がもろくなり、肥厚化し、スムーズに機能しなくなってしまうケース。
原因.2
僧帽弁を支えている腱索という組織が伸びたり、切れてしまって僧帽弁の開閉がうまく機能しなくなってしまうケース。
この様に、僧帽弁がうまく機能しなくなる原因はわかっているのですが、ではなぜこうした状況が起こるのかについては残念ながらよくわかっていないのです。
これまでの症例から6歳以上の個体に発症例が多く、高齢になるにつれてリスクが高くなる傾向が見られています。
また大型犬よりも小型犬の方が発症例が多い傾向もあります。さらに犬種によっては品種改良の経緯など遺伝的な原因で弁膜症が発症しやすいリスクが指摘されています。
犬種ではトイ・プードルやシーズー、パピヨン、マルチーズ、キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルなどに発症しやすい傾向が見られています。
弁膜症の症状について
弁膜症によって逆流を起こすようになると、どのような症状が見られるのでしょうか?
心臓の収縮時に逆流が起こることで本来なら全身へと運ばれるはずの血液が左心房に戻ってしまうことになります。
血液は全身をめぐりながら酸素と栄養を届ける重要な役割を担っていますから、この状態になると全身の血液不足が生じるとともに体の機能にも悪影響を及ぼすようになります。
症状としては、日常生活で見せる症状としては散歩などの際に息切れを起こしやすくなる、すぐ疲れてしまう。
あるいは元気がない、咳をするなどが挙げられます。また、食欲不振や心臓の異音、手足の冷え、運動をしていなくても呼吸が早くなるといった症状も注意したいところです。
人間でも血行が悪化していると疲れやすくなる、免疫力が低下する、手足が冷える、さらには脳が酸素不足で頭痛が生じたり、思考力が低下するといった問題が起こります。犬の弁膜症でもこうした症状がワンちゃんに見られるようになるのです。
弁膜症のステージ
僧帽弁閉鎖不全症に関しては症状に応じて5つのステージが設定されています。比較的軽度で普通の暮らしを送りながら対策を行っていくことができるものから、投薬をしながら症状の悪化を防いでいく重度のものまであり、ワンちゃんがどのステージにあるのかを正確に把握したうえで適切な治療・対策を行っていくことが求められます。
ステージA
このステージに分類される目安は歯周病が原因で口臭が見られること、元気がない、散歩にでかけたときに疲れやすくなった、または歩く距離が短くなったなどの症状です。この段階では心臓の雑音はみられないため、日常生活のワンちゃんの様子で判断することになります。「ステージA」ではまだ医療機関での本格的な治療は必要なく、歯磨きをしっかり行う、栄養バランスのとれた食事を心がけるといった対策をとりつつ、次のステージB1に悪化させないことが目標となります。医療機関で診察を受けた上で食事療法に加えてサプリメントの使用が推奨されることもあります。
ステージB1
この段階で、先程症状のところで挙げた心臓の状態の変化が見られるようになります。心拍数が多くなる、呼吸が早くなる、そして心臓に雑音が聞こえるなどの症状です。血液が末端にまで届きにくくなることで体か冷えやすく、手足が冷たくなる症状が見られるようになりますが、そうなるとステージB1に分類されます。これらの症状が見られると飼い主としてはとても心配になるものですが、このステージでも医療機関での治療は基本的に行わず、食事療法とサプリメントの使用と安静を心がけたうえで次のステージB2に進行するのを防ぐのがおもな対策となります。
ステージB2
ステージB2に入ると本格的な心臓病としての治療が行われるようになります。もはや日常生活での食事療法やサプリメントでは心臓病の異常をカバーするのが難しくなるため、薬物療法をメインに症状の進行を抑えるのを目指していくことになります。このステージでは軽度の心臓の雑音のほか、痰がからんだ咳がでる、息切れを起こしやすくなる、さらに舌が青くなるといった症状が分類の目安になります。なお、レントゲン検査を行うと左心房の肥大化が見られるようになるほか、血圧にも異常が表れます。この段階で投薬が開始され、強心薬による心臓機能のサポートを目指します。
ステージC
呼吸がかなり早く激しくなった、咳が激しくなる、心臓の雑音がはっきりと聞こえるといったステージB2から進行した症状に加えて、興奮すると失神してしまう症状も見られるようになります。レントゲン検査では左心房のさらなる肥大化も確認されることもあります。ステージB2では2段階のアプローチでの投薬が行われていましたが、このステージCでは3つの段階での投薬となります。「トリプリセラピー」とも呼ばれ、強心薬、血管拡張剤に加えて利尿剤の投与も行われ、異常がもたらす心臓への負担や体への影響を軽減させる対策が行われていきます。この段階になると血流の低下が腎臓に負担をかけてしまうので、食事療法においては塩分の制限・コントロールが重要になってきます。
ステージD
これまで挙げてきた症状がかなりはっきりと、重度な形で見られるほか、咳が激しく出たときに失神してしまうこともあります。この段階に達すると腎臓の異常に加えて肺水腫の症状を抱えることが多いため、投薬治療ではステージCのトリプルセラピーに加えて肺水腫の症状を和らげる利尿降圧剤や抗アルドステロン性利尿剤といった薬が投与されることもあります。この投薬治療が非常に難しく、肺水腫の症状を和らげるために利尿降圧剤を使うと腎不全の症状を進行させてしまうため、腎臓への負担を避けながら適切な用量での投与が求められます。このあたりは獣医とよく相談したうえで慎重に治療を行っていく必要があります。
弁膜症の寿命について
弁膜症を発症してしまった場合、どれぐらい生きられるのでしょうか?
後述する手術を除くと根治治療は難しいため、投薬が必要なステージB2以降になってしまうと予後はあまりよくないと言われています。一般的に投薬治療が必要になった後の寿命は8ヶ月程度、半年以上生きられるのは全体の50パーセント程度と言われています。
この数字を見てもかなり厳しい状態をもたらす恐ろしい病気であることがうかがえます。
弁膜症の手術内容と費用とリスクについて
投薬での治療は負担が大きいうえに根治が期待できない。だったら手術で治療はできないか?と考える方も多いでしょう。
しかし犬の弁膜症では手術は非常に難しく、現在でも十分に広まっているとは言えない状況です。
人間の心臓に比べて犬の心臓はとても小さく、手術がとてもデリケートなので高齢犬の場合、手術の負担に耐えられない可能性があります。
費用に関しては手術の内容などによって変わってきますが、数十万円、場合によっては100万円以上かかることもあります。
データによると成功率は90パーセントにも達すると言われ、リスクが高い手術ではありません。ただし術後は1週間程度の入院が必要となります。
リスクについて
手術中の出血や低血圧によって深刻な状況に陥るケースのほか、術後に腎機能が低下したり、血栓症が起こる、さらには免疫力の低下によって肺炎などの感染リスクが上昇するといった点が挙げられます。
手術の成功率は高いけれども、その後の合併症などのリスクに注意が必要になる、といったところでしょうか。
いずれにせよ日本ではまだ十分に普及しているとは言えないため、経験が豊富な獣医も限られています。事前に評判や実績をよくチェックし、ワンちゃんの命を預けられるような信頼できる獣医のもとで手術を受けられる環境づくりが欠かせないでしょう。
まとめ
犬の弁膜症は治療が難しく、根治するよりもできるだけ症状を抑えてワンちゃんに長生きしてもらうことがおもな目的になります。それだけに飼い主の精神的・経済的な負担も大きくなりがちです。6歳以上、少なくとも8歳以上になったらこの病気のリスクを意識し、日頃からワンちゃんの状態を確認すること、もし気になる症状が見られたらできるだけ早く獣医の診察を受けること、といった心構えが重要です。
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