犬の糖尿病とは? 原因や症状や治療法について解説|わんちゃんライフ
わたし達人間と同じで、犬も糖尿病を発症してしまうことがあります。
共通する点や異なる点はありますが、しっかりとした治療を行わなければ、さまざまなトラブルを招いてしまう恐れがでてきます。
犬でも引き起こしてしまう糖尿病の原因や症状、治療法について解説します。
犬の糖尿病とは?
糖尿病とは言葉の通り尿に糖が出ること、また血糖値が上昇してしまう病気です。
膵臓にあるβ細胞から分泌されるインスリンというホルモンが血糖値を低下させる働きを持ちますが、そのインスリンが機能しなくなることにより、血液中のグルコース(ブドウ糖)濃度が高い状態となってしまうのです。
正常な犬の場合の血糖値は50~100mg/dlほどですが、糖尿病になってしまった犬では150~200mg/dl以上の値となってしまいます。
そのため、糖尿病の疑いがある場合はまず血糖値の測定を行います。また、糖尿病が進行しているケースで尿に糖が含まれているため尿検査も行なっていきます。
糖尿病になってしまうと食事から吸収された糖分の濃度を調節することができなくなり、血液中の糖分濃度である血糖値に異常がみられます。
糖尿病になる犬は約100頭に1頭ほどと言われております。
糖尿病に存在する「Ⅰ型糖尿病」と「Ⅱ型糖尿病」
いくつかの型のある糖尿病は大きくⅠ型糖尿病とⅡ型糖尿病に分けられます。
その中でも犬は、Ⅰ型糖尿病の割合が非常に高いと言われており、私たち人間の糖尿病とは割合いが逆となっています。
犬のⅠ型糖尿病では、膵臓にあるβ細胞からインスリンの分泌が正常にされなくなることにより高血糖の状態となります。
その一方、Ⅱ型糖尿病では膵臓によるインスリンの分泌機能は異常をきたしていないものの、インスリンによる血糖値の作用がが上手く機能しないことによる高血糖の状態のものを指します。
Ⅱ型糖尿病になる犬は稀で、治療にインスリンの投与を必要としないケースもあったりします。
他の疾患からくる合併症の可能性も
糖尿病になってしまう要因として他の疾患からケースもあります。
中には先天的は要因からくるものや、ホルモンバランスの異常、クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)などの免疫異常から合併症として発症することもあります。
いずれにしても、血糖値の異常が続くことによって、体の様々な機能に障害を起こしてしまうリスクを持っているため早急な対応が必要となってきます。
高血糖状態になってしまうと?
高血糖な状態では正常に満腹中枢が働くことができなくなることにより食欲増加などが見られます。
これは糖尿病による高血糖な状態ではインスリンが不足してしまうことにより、細胞に十分な栄養素がきちんと供給されなくなってしまい細胞が餓死状態(栄養素不足)となってしまうためです。
しかし、多くの食事を摂取しても糖を上手く活用することができずに餓死状態(栄養素不足)は改善されることはないのです。
そのため、糖尿病になった犬は細胞の糖分不足により、食欲とは逆に体重の減少などの症状がみられます。
糖尿病の症状は?
まず、糖尿病になった犬の初期症状では、飲水量や尿量の増える多飲多尿や、食欲増加しているのに体重が減少してしまうといった症状などがみられます。
糖尿病の症状が進行していくと、体の中で糖の代わりに脂肪を使用することで生まれるケトン体という血液中に含まれている有害な物質が増加していくことにより「ケトアシドーシス」という状態になります。
それにより、食欲不振や元気の低下、嘔吐や下痢などといったの症状を引き起こしてしまいます。
また、見た目で分かりやすい変化としては、短期間で「白内障」を発症してしまうことがあり、これにより糖尿病が発見されることもあります。
糖尿病の原因は?
犬が糖尿病になってしまう原因にはⅠ型糖尿病で見られる「インスリン欠乏性」とII型糖尿病で見られる「インスリン抵抗性」の2つに大別されます。
Ⅰ型糖尿病で見られる「インスリン欠乏性」では、膵臓で作られるインスリン分泌が低下してしまう病気であり、自己免疫性や特発性の原因などによって引き起こされます。
自己免疫性の糖尿病では、インスリン分泌を行う膵臓にあるβ細胞が自分自身にある免疫細胞による攻撃を受け破壊されてしまうことによるインスリン不足に陥ってしまう自己免疫疾患になります。
特発生原因が分からないものを言います。
中齢から高齢の犬で多く見られることがあり、先天的な要因や膵炎、免疫異常などが原因だと言われています。
II型糖尿病で見られる「インスリン抵抗性」は、インスリンを体中の細胞が受け取ることに鈍感になってしまっている状態にあり、先天的なものからホルモン異常、環境やステロイド製剤によるものなどいくつもの原因が重ってしまうことで引き起こされてしまうことがあります。
糖尿病にかかりやすい犬種や特徴は?
糖尿病にかかりやすい犬種として、「トイプードル」、「ヨークシャーテリア」、「ダックスフンド」、「ミニチュア・シュナウザー」、「ビションフリーゼ」などが挙げられます。
糖尿病にかかりやすい年齢は?
どの年齢でも糖尿病は発症することがありますが、発症しやすい年代としては中年齢以降(7〜9歳)が発症しやすいと言われています。
また、「オス」よりも「メス」の方が、ホルモンによるインスリンの効きにより約2〜3倍かかりやすく、特に未避妊のメスはリスクが高いとされています。
水を飲む量はどれくらい増える?
水を飲む量や尿をする量は把握しておくことは、多くの病気のサインに気づくことができるので、普段から気にかけてあげることが大切となってきます。
一日に飲む犬の飲水量は最低でも体重1㎏あたり50mlが目安と言われています。
多飲の目安として、体重1kgあたり100ml以上飲むという状態が続く場合であれば注意が必要です。
例)
3kg:150ml、5kg:250ml、8kg:400ml、10kg:500ml、15kg:750ml
これらの飲水量を把握するために、水の量を確かめてから与えるようにし、残った量から1日の摂取量を記録していくようにしましょう。
糖尿病が進行していくとどうなるの?
前述したように症状として食欲低下や元気がなくなってきます。
また、糖尿病が進行することにより「糖尿病ケトアシドーシス」という状態になったり、様々な合併症を発症していきます。
これは危険な状態になっており、緊急を要して治療を行わなければならない状態になります。
糖尿病ケトアシドーシスになると
併発している疾患がないかをまず確認し、低血糖になってしまわないように気を付けながらインスリン注射により血糖値を下げていきます。
また、糖尿病ケトアシドーシスになると「脱水状態」になっていることも多いため点滴による輸血や、尿によって失われた電解質(ナトリウムやカリウム)などを点滴などにより補給してあげる必要があります。
このように、「糖尿病ケトアシドーシス」は迅速かつ適切な治療が必要となってきます。
糖尿病になると合併症を起こすリスクも?
糖尿病が進行していくと他の合併症を生じるリスクもあります。
多く見られるのは、「白内障」や細菌感染による「皮膚炎」や「膀胱炎」、腎機能や肝機能に影響などがあります。
また、メスの子では「子宮蓄膿症」を引き起こすことなどもあります。
これらのように、糖尿病は進行するほど重症度は増していくため、早めの対応が重要になってきます。
白内障になるリスクが高い?!
糖尿病が進行してしまうと、白内障を合併してしまうことが高い確率であります。
原因は、まだはっきりと分かっていませんが、高血糖が続くことで糖アルコールが蓄積し、白濁が起こると考えられています。 その他にも酸化や糖化などの影響が関係しているとも言われています。
さらに、糖尿病による白内障の場合、抵抗力や免疫力が下がっている事が考えられるため、外科手術などもリスクが上がってしまうということがあります。
白内障は進行していくと失明にも繋がってしまう恐れもあるため、糖尿病の治療と白内障への対策が必要になってきます。
犬の糖尿病の治療法は?
糖尿病の疑いから血液検査や尿検査を行い、糖尿病の判断をしていきます。
糖尿病の治療を行なっていく上で、血糖値をコントロールしていくことが大切で、多くの場合ではインスリンを投与するという治療がメインになってきます。
普段の生活では「食事療法」といったことも行いますが、「糖尿病ケトアシドーシス」などの状態では点滴や投薬など対処療法などを行ないます。
インスリン治療とは
軽度の糖尿病の場合は、食事療法や運動療法などでコントロールすることもあります。
ですが通常は、1日2回のインスリン注射と規則正しい食生活を行うことになります。
ただし、経口での投与ができないインスリンは皮下注射で投与する必要があり、かかりつけ獣医師さんから自宅での注射の方法をしっかりと聞いて行う必要があります。
インスリンを打たなかったらどうなるの?
インスリンが不足していくと細胞が飢餓状態(栄養不足)になっていきます。 この状態が続くと、食欲中枢が刺激され食欲増加が続きます。しかし、いくら食べても糖を有効活用できない状態になっているため飢餓状態は改善されず、「ケトアシドーシス」の状態になってしまいます。
メスの犬の場合は?
メスの犬はオスと違い発情後に高血糖になることがあり、「発情後高血糖」といいます。繰り返し発情後高血糖になるうちにインスリンの分泌能力が低下してしまい糖尿病になってしまうことがあります。そのため、糖尿病の犬は避妊手術を行うことが必要になることもあります。
糖尿病に治療費はどれくらいかかるの?
糖尿病での治療は基本的にインスリン注射によって行なっていきます。治療費用に関しては一般的に以下のようなものがかかってきます。
血液検査: 6,000円程、インスリン注射: 6,000~10,000円程、入院費用: 3,000円程がかかってきます。
ただし、インスリンも作用する時間や種類によってタイプも異なってくるため値段は異なってきます。また注射器も使い捨てタイプのものや、複数回使用できるものがあります。
入院期間も尿にケトン体が混じらなくなるまで、約3日~1週間度かかることあります。
※値段や入院期間は病院や症状によって異なってくるため、かかりつけの病院にお問合せください。
食事療法とは?
私たち人間の糖尿病の場合では「カロリー」や「糖質摂取量の制限」などを設けられますが、犬が糖尿病になった場合には糖尿病の際に使用する療法食というドッグフードが販売されています。これらは食物繊維の割合が高く配合されおり、糖の体内での吸収を穏やかにする配慮がされた設計となっています。糖尿病が進行していくと徐々に元気がなくっていき体重減少が現れてきます。
糖尿病には様々な合併症を招いているケースが想定されてます。療法食にもいくつかの種類があるので、その子に合ったドッグフードの種類や量をかかりつけの獣医師さんに相談して与えるようにしましょう。
注意する食事は何?
糖尿病のわんちゃんは甘い食べ物はもちろん、糖質の多いものは高血糖につながる恐れがあるため極力与えないようにしましょう。 また糖質の制限に合わせて、 糖類の吸収を穏やかにしてくれる、「食物繊維」や「難消化性の炭水化物」を与えることもおすすめです。
例えば、「大麦」や「玄米」、「イモ類」などは炭水化物も含まれていますが、食物繊維が豊富なので上手く摂取させてあげましょう。市販のドッグフードを選ぶ際にも、糖尿病用の療法食の中からタンパク質量や脂肪量をチェックしつつ、自然素材のものを選ぶようにしましょう。
糖尿病の食事やフードについてはこちらで詳しく解説しています。
犬の糖尿病の時に与える食事やドッグフードはどれを選べばいいの?>>
犬の糖尿病の予防法
糖尿病を予防するためには、日常の食事の偏りや運動不足などに注意していくことが大切になってきます。
脂質の多いおやつや、炭水化物の多い食材などを与え続けては、血糖値の上昇や肥満にもなりやすいため注意が必要になってきます。そのため、わんちゃんの状態やライフステージに合わせた食事を意識してあげましょう。
また、糖尿病を予防していくためには、クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)・膵炎などの基礎疾患の適切な治療も大切になってきます。
メスの犬は避妊手術を行なっていくことで「発情後高血糖」を防ぐために有効な予防法ともなります。
さいごに
私達人間と同じでわんちゃんも糖尿病になってしまうと、その治療は一生涯続いてしまうことが多いのが現状です。進行し続けてしまうと、「糖尿病性ケトアシドーシス」など命に関わるような状態になってしまうこともあります。
そのため、飼い主さんによる「食事管理」や「適切な運動」などが大切になってきます。
中には原因不明なものや先天的なものなどあり難しい病気の一つでもありますが、「飲水量」や「尿水量」を普段から把握しておくことで病気のサインをいち早く察知することもできますので、異変を感じたら早めに動物病院で診てもらうようにしましょう。